さて、私の遺品は何にしようか?! [本のブルース]
書名『遺品博物館』。
まるでホラーのようなタイトルですが、そうではなく、少し毒のある短編集です。
作者の太田忠司氏は星新一ゆかりの賞にかつて入賞された方と聞けば「さもありなん」と納得しました。
さて、本作は、故人の遺品を通して生前の生き方を語るというユニークな設定で、そのストーリーの隠し味が毒のように痺れます。
八つの短編を読み終えたとき、ふと考えました。 私の人生を語るにふさわしい遺品はなんだろうか?私の生き様を切り出してくれるものはなんだろうか、と。
この物語では、それは決して高価なものに限られるわけではなく、また大切にしたものに絞られるわけではありません。 その人のことを話すうえでエピソードを凝縮したものでした。
自分のことがよくわからないので、鬼籍に入った近しい人のことを考えてみましたが、この短編集のような鮮やかな物語と遺品は思い浮かびませんでした。
作者の非凡な才能を痛感いたしました。
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