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『fishy』

2020-11-11T23:37:10.jpg
金原ひとみの本を読むのは彼女の芥川賞受賞作『蛇とピアス』以来だ。

当時は、二十歳の女性がすごい話を書くなぁと感心し、でも一発屋で終わるんじゃないの?と、くだらない心配をした。

しかし、芥川賞選考の先生方の目は節穴ではないのだ。

その証拠に彼女は今もしっかり作家として生きている。(他人の心配より己の心配をすべきだった。)

この『fishy』はかなりの傑作だと思う。昔の村上龍を思い出した。

結局、私はこういう危なかしい、アウトロー的な、現代の若者風俗を投影した小説が好きなのだ。(この陳腐な表現の対局にあるような。つまり、自分に無いものに惹かれているのだ。)


さて、話は3人の女性を主人公にした物語。3人の共通点は酒好きということだけで、あとは性格も、職業も、考え方や私生活も全く違う。


3人のうち一人だけ片仮名表記の「ユリ」は独自の鋭い理論で歯に衣を着せず他の二人に言葉を浴びせ、時には険悪なムードにしてしまう。

ユリの正体はよくわからない謎の女だけれど、一緒にいる2人の女性も、付き合っている男性も、そして読者も自由奔放な彼女に惹き付けられてしまう。

一気読み必至の反面、セリフに深みがあって、(もしかしたら単に理解しづらいだけの意味のないものかもしれないが)、何度も読み直したいなぁという衝動が起きた。(読みなおさんやろなぁ。)

ユリの吐く毒のような言葉や思考は、現代をアウトローに生きる若い女のコ特有のもので、これをメジャーでちゃんと書けるのは金原ひとみだけではないかと私は思っている。

そういう意味で私には本作をキチンと理解したいという欲望がある一方、自分は絶対に理解できないという諦観があったりする。

閑話休題、本作はテレビか映画になるのではないだろうか?そう考え、自分なりにキャスティングを想像するが全くいい案が浮かばない。ただし、唯一このひとだけは決まりだ。

ユリは仲里依紗しかいないだろう。
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