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『ジュリーの世界』 [f]

2021-07-17T23:26:00.jpg
昔、私の住む町にメリーさんと呼ばれる女性がいた。

その女性はいつも真っ赤な洋服を着て町の中心部にあるバスセンターの待合室の椅子に腰掛けていた。

毎日同じ場所に座っていた。顔は厚化粧、記憶は定かでないが赤い帽子もかぶっていたかもしれない。

当時の小学生たちの間ではいろんな武勇伝があった。

メリーさんがいつも座る椅子にすわっていたら「そこは私の場所だからのきなさい」と、言われた。


メリーさんが男と腕を組んで歩いていたから後をつけたら「ついてくるな」と、怒鳴られた。

メリーさんを最後に見たのはいつだったか覚えていないが、ずいぶんと老けたなぁと思った記憶がある。

今になって思えばメリーさんは街娼だったのではないか。小さな町には似つかわしくないのでそうではないのかもしれない。ただの愉快犯のほうが面白い。

閑話休題、前置きが長くなった。

『ジュリーの世界』、この本は普通に読んでも面白いが、1970年代の終わりから80年代初頭の京都新京極周辺を知っている人が読んだら懐かしくてたまらんだろうなぁと思う。

この小説の主人公、河原町のジュリーは実在人物。ただし、物語は作者、増山実の創作とのこと。

河原町のジュリーは浮浪者で、今の言葉で言えばホームレス。彼を巡って町の交番のおまわりさんが語り部として話を進めていく。

ちなみに河原町のジュリーは1984年に凍死し、彼の訃報は新聞にも掲載されたという。

この本を読んでメリーさんを思い出した。ジュリーと違いメリーさんの消息は私の知る限り新聞沙汰になっていない。
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