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山崎豊子著『ぼんち』その2 [f]

2021-09-22T23:17:23.jpg
昔の豪商にはその地域の特徴があったようだ。その中で最も有名なのが近江商人の三方良しという教えだと思う。

『ぼんち』の舞台は大正から昭和20年頃までの大阪の船場である。

昔、読んだある本に船場商人の特色はその家の女性に婿養子をとって家業を継がせることと書いてあった。

婿になるのは、その家の奉公人の中で一番よくできる男を抜擢する。つまり、大番頭が婿になる。そうすれば家業はますます栄えるというもの。

その家に男の子がいた場合は、頭のいい子であれば医師にする。凡庸であれば、商売にかかわることはさせず、名誉職につけるか、家が傾かない程度に遊ばせておく。いわば飼い殺しのような状態にしておくという、親にとっても子にとっもある意味極めて厳しい決めがあったようだ。

なにやら現代の会社組織に通じるものを感じる。

閑話休題、『ぼんち』の主人公は跡取り息子として、しっかり家業を継ぎ、妾を5人かかえながらもしっかり商いをやっていく。

もし、お妾さんがいなかったら、さぞや店は大きくなったのか、といえば、そうではないだろう。主人公の働く原動力が放蕩にあり、ぼんちになることを生涯の目標にしているからだ。

そういう意味で、戦前までの大阪、船場の格式高い商人の慣習を知るという点でも本書は貴重な資料的価値がある書物であると思う。しかもそれが血の通った文章で活き活きと書かれている点が山崎豊子の凄味であろう。

余談だが、私の父方も商家であったようで、考え方や風習に今回読んだ『ぼんち』の船場のものと少し通じるものがあった。

そんなふうに書くのはおこがましいことだが、それは普遍的なものとして商家に共通した考え方や行動、習慣なのだろう。

昔、商売人が少し嫌われ、警戒された理由の根底にあるものと言ってもいいかもしれない。
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