稲田幸久著『駆ける』 [f]

舞台は戦国時代の山陰。尼子と毛利の対決である。
尼子十勇士なるものをよく知らないが、主人公は彼らではない。
では、主人公はというと、しいて言えばサブタイトルにもなっている少年騎馬兵ということになるが、それも違う気がする。
本当の主人公は本作に登場する者全てで、群像劇と言っていいのだと思う。
殺す側にも、殺される側にも人生があり、背負うものがある。各々に大義があり、事情がある。
結句、勝者は毛利方であり、その勝利に大きく貢献したのは少年騎馬兵ということになる。
閑話休題、本作のテーマは、実は戦争反対なのではないだろうかと、思い至った。
平和な、争いのない時代であれば、この登場人物全員がそれぞれの人生を全うできたであろう。
そういうことを作者は直接書いていないが、そんな気がする。