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『YUMING TRIBUTE STORIES』 [f]

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昔、下宿の向かいの部屋のお兄さんがユーミンをしょっちゅう聴いていた。

当時の私は今よりももっと付き合いづらい人間だったので、そのお兄さんとはほとんどしゃべったことがなかった。

ユーミンの曲は覚えていないが、その特徴のある声からすぐそれとわかる。

対抗するわけではないけれど、私は日本のロックばかり聴いていた。

正直言ってユーミンは嫌いではない。オフコースもそうだ。むしろ、聞き出すとハマりそうで、避けていた。


閑話休題、標題の小説(短編集)を読みながら、あのお兄さんやあの部屋のことを思い出した。

今年はユーミンデビュー50周年で、それを記念したオリジナル企画だそうだ。

6人の人気女流作家が、ユーミンの曲をモチーフにして短編を書いている。それがまたどれも素晴らしい。

歌詞をうまく膨らませて見事な一編に仕上げている。読みながらユーミンの曲が勝手に頭の中で流れてくる。

今振り返れば、あの頃、食わず嫌いにならず、ユーミンを聴いていれば、ひょっとして伝説の苗場コンサートにも足を運んだかもしれない。

もしかすれば、あのお兄さんとも今も交流があるかもしれない。

そういえば、下宿を引き払う際に挨拶して、「いつも大きな音でロックを聴いてすみません」と、私は詫びた。そのお兄さんはそれまでも苦情めいたことは何もなく、その日も嫌味の一つもなかった。「こちらこそいつも同じような曲ばかりですみません」と、逆に言われてしまった。

少し青春のリグレットである。
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