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村山由佳『ある愛の寓話』 [f]

2023-05-17T00:05:37.jpg
何かの書評で褒めてあったのだろう。書評を本選びの一つの基準にしている。

こういう本を読むと、読書の意味を考え直すことになる。

私の場合、本を読む理由は大きく二つ。一つは勉強、もう一つは娯楽である。ただ、この2つは全く別物ではなく、勉強のために読む本の中に娯楽性があったり、娯楽の読書の中に学びがあったりする。

閑話休題、『ある愛の寓話』。寓話とあるように、まるで子供の頃読んだ『イソップ寓話』のような不可思議な味わいがこの本にはあった。


読んでいてとても楽しい。そして楽しさしかないのだ。ここから知識として何かを学ぶことは何もない。けれど、読んでよかった、楽しかったという、原始的な喜びがこの本にはある。


本を読む本来の楽しさを教えたもらった。

すると考えてしまう。数多ある積ん読の山の中に、本来の読書の楽しさを教えてくれる「本」は果たしてどれだけあるのだろう。

書き手の村山由佳氏は「あとがき」にこう記している。

【そう、物語るとは本来、こんなにも胸躍ることだったのだ。】

そう、そして、物語りを読む(聞く)ことは、本来こんなにも胸躍ることなのだ。

著者が書く【原点回帰という以上に、〈自分ならざる者〉へ生まれ直すための新たな出発点のように感じている。】と、同じように読み手の立場の私も思っている。
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