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『破綻』 [本のブルース]





『破綻』・・・なんとも不気味なタイトルだ。

サブタイトルは「バイオ企業・林原の真実」。岡山市にあり、地方企業の雄といわれていた林原グループ。当社は残念ながら今から約3年前の平成23年2月、会社更生法の適用を申請した。

恥ずかしながら、わたしはその一連の報道をなんとなく覚えている程度で、正直言えば、オリンパスの上場廃止問題や大王製紙元会長の巨額資金流用問題などと十羽一絡げ的に、同じくくりで認識していた。(この認識は全くの誤りである。本書を読んでそれがよくわかった。)

本書は、林原グループの社長の実弟で、自らも当社グループの重役であった林原靖氏が書いている。

当社の本業は好調であり、含み資産も多く、銀行との行き違いはあったにせよ巨額資金が不当に使われていたわけではない。つまり、会社更生法という手段ではなく、民事再生など別の方法で対応していれば、今のようなことにならなかったであろうと思われる。著者はさぞや無念であり、また銀行団や弁護士、マスコミに対する怒りも相当あるものと推測されるのだが、文章は淡々としていて、清々しい。それだけに余計、心中察して余りある。

内容は、わたしの下手な要約で誤解されるといけないので、割愛する。

あえて一文だけ記すと、

「以下はわたしの独り言だと思って聞いてもらいたい。これからは、日本のベンチャーや中小企業は決して銀行融資を当てにしてはならない。日本では完成された大企業でないと、十分な融資を受けることが難しいからだ。(中略)こんな時代にやれることは、この国を離れるか、思いきって会社を閉めるか、あるいは死にもの狂いで別の新たな資金確保の方策を見出すことだ。だがそれはとてつもなくむずかしい。(中略)独創や革新をめざす企業の成長も、保守的で体力の脆弱な取引銀行のレベルを超えて成し遂げられる、ということは金輪際あり得ない。」(本書168~169p)

この本を読んだ後、銀行や弁護士、マスコミが怖くなった。青臭い表現をすれば、この世の中はなんと怖いところなんだ、と思わざるを得ない。たしかに命までは取られないのかもしれないが、まるで戦国大名が合戦で負ければ富、栄光、そして命さえも全て失うのと同じことが現代社会でも起きている。生物としての命は強制的に奪われないが、社会的生命は絶たれるのと同じである。また、著者の兄で、林原の社長は体調を崩し、二度生死の堺をさまよっており、命までは取られないとも必ずしも言えない状況だった。


ゆえに本書は経営者の方にぜひお読みいただきたいと思った。特に老舗と呼ばれる企業様や業績好調な地域の優良中堅企業様は本書から得るものは多いのではないかと考える次第である。


【データ】 林原靖 『破綻』 ワック㈱ 2013年7月初版、同年9月第5刷 税抜き1,500円
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