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冨山和彦著『なぜローカル経済から日本は甦るのか』 [本のブルース]






タイトルだけを読むとなんとなく中身が想像できてあまり手が伸びないかもしれない。

ところが、どっこい、内容はすごくよく、ぜひ、地域で働く人にこそ読んでもらいたい1冊である。

題名から、つい、「地方のオンリーワンと言われるような企業がすごい技術・製品で業績を伸ばし、海外にも進出、大成功を修める」的な話を想像した。

ところがそうではない。副題にある“GとLの経済成長戦略”というのが本書の主題である。

Gというのはグローバル企業、Lというのはローカル企業を意味する。グローバル企業というのは世界の企業を相手にするのだから競争も激しいし、ルールも国際ルールに従わなければならない。一方のローカル企業は地域の生活に根ざした企業であり、競争はグローバル企業のように激しくない。しかし、その地域には存在しなければならない企業なので、業績は堅実である。


たとえば銀行を例にすると、グローバルに活躍する銀行はシンジケートローンやデリバティブなどで莫大な収益をあげるが、リーマンショックのような世界中を巻き込むような大損を出すことがある。一方の地域金融機関の地銀や信金というのは顔の見える範囲で預金を集め、そのお金を顔の見える範囲で貸し出すというのが基本的なビジネスモデルである。両者は同じ金融機関であるが、規模や方向性は異なっている。それにもかかわらず、適用されるルールはほぼ同じのためローカル企業は非効率なことが起きる。要はローカル企業にとってはルールが過剰なのである。そうではなくてルールをローカルルールにしてその地域独自で経済を回せばよいのではないか。そのかわりにローカル企業にはグローバル企業にはない別の使命がある、というのが作者の言いたかったことだと私は理解した。



私はよく知らないのだが、著者の冨山和彦氏はGとLの両者に深く関わったご経験があり、各々にたいへん詳しい。ゆえにGとLはそもそも違うのだから同じ土俵で論じるのではなく、野球とサッカーが違うように別々に論じなければいけないという新説を書くことができたようだ。(新説と言うのは私が浅学非才のためかもしれないが・・・)


すでに地域で会社を経営されている社長さんからこれから地域で働こうと考えている志の高い若者まで幅広い層に読んでもらいたい1冊である。特に金融機関に勤めている方には必読と申しあげたい。
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