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最近読んだ2冊の本 [本のブルース]





三木卓『私の方丈記』(河出書房新社、2014年)。

徒然草と並んで古文(もしくは日本史)で習う有名な鎌倉時代の随筆です。

現代語訳ではありますが、中身を通して読んだのは、恥ずかしながら、今回が初めてでした。

内容は、今から900年近く前とは思えないほど現代社会とよく似ています。戦乱や飢饉、天変地異などで、民衆の生活は困窮の極みです。貴族であっても生活苦から逃れられていないようで、平清盛による福原遷都で、京の都が荒れ果てたという記述もあります。

筆者の鴨長明は、50歳を超えて出家し、世捨て人のような生活に入り、心の安寧を得た、と書き記しています。今でいえば、ホームレスの心情に近いかもしれません。

自分一人であれば、長明のような生き方、悟り方もいいかもしれません。また、長明自身も若い頃から中年にかけては貴族社会の出世競争に明け暮れていたのですから、晩年でそのような境地になるのは許されてもよいでしょう。しかし、若い人がこの本を読み、世捨て人になったのなら、あるいはそこまでいかなくても、出世欲というものをなくしてしまえば、日本という国はますます元気がなくなるのではないかと思います。


これに対して、たまたま読んだのが、

三浦雄一郎『私はなぜ80歳でエベレストを目指すのか』(小学館新書、2013年)。

こちらは題名が示すように、方丈記とは真逆で、老いてもなお、自己記録の更新を目指そうぜ!という元気な内容の本です。

三浦氏は、目指すものはなんでもよい、と書いています。今まで、自分ができなかったこと、あるいは以前やった難しい事柄に再度挑戦する(三浦氏のエベレストはこれ)が大事であり、そうした目標を得ることで、人は成長し、心も身体も若くなると言われます。

全くその通りだと思います。反論の余地もございません。

もしかすると鴨長明も心の安らぎを得るために、貴族の位階を捨てるという挑戦をしたのかもしれません。(かなりウガッタ見方でありますが・・・。)
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