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剣客商売『新妻』 [本のブルース]



お馴染み、池波正太郎氏の剣客商売シリーズ『新妻』所収作品の中にしびれる“くだり”があったのでご紹介したい。

「金貸し幸右衛門」より。

「戦国の世が終り、徳川将軍の下に天下泰平が百何十年もつづいているのは結構なことだが・・・・・・わしはな、かえって戦乱絶え間もなかったころのほうが、人のいのちの重さ大切さがよくわかっていたような気がするのじゃ。いまは、戦の恐ろしさは消え果てた代りに、天下泰平になれて、生死の意義を忘れた人それぞれが、恐ろしいことを平気でしてのけるようになった。なればこそ、油断は禁物ということよ」

池波正太郎は昭和の作家であるから、戦国の世は先の戦争を指し、【天下泰平になれて】は現代社会のことを言っていたのだろう。その予言はますます当たってきている。



借金は、おのれの金ではございませぬ。危急をしのぐ方便でございますゆえ、どこまでも、これを返済することによって、危急が消え去り、ひいてはその人の信用も却って増すのでございます」

苦労人であり、小学校卒業後、実社会で経験を積んだ池波正太郎ならではの書きぶりだと思う。借金の本質をとらえた言葉である。

借金がカタカナで「ローン」と記されるようになり、金を借りる敷居が低くなった。今一度、金を借りるということを問うてみたいと思った。

さて、次はどんな言葉に出会えるのか、ますます【剣客シリーズ】が楽しみになってきた。
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