SSブログ

『西郷の首』 [本のブルース]





評論家の縄田氏が絶賛した作品。

タイトルイメージとは異なり、主人公は加賀藩の若い足軽二人。彼らの目を通して作者の伊東潤氏は、明治維新とは士族にとってどうだったのかを論じている。


親友同士であった二人の運命を分かつ鍵として「西郷隆盛公の首」を用い、同時に士族終焉の象徴と作者はした。


閑話休題、私はこの作品を先日の金沢への行き帰りで読んだ。これも何かの縁であろう。


どこまでが事実で、どこからが創作なのかよくわからいが、事実と事実の点を作者が巧みにつなぎ、活き活きとした幕末から明治にかけての加賀・石川県を描いた。生意気な言い方で恐縮だが、その筆力は高い。


作者の伊東氏は舞台になる場所を全部訪問するという。きっと徹底的にフィールドワークするのだろう。私のように金沢に住んだことがあるものが読んでも、幕末の金沢はさもありなんというふうで、違和感を感じない。


この作品の登場人物の多くは、幕末から明治にかけて歴史の中心にいた人物ではない。どちらかといえば運命に振り回された人物である。その振り回された側からとらえる本作の意義は、現代においては極めて大きいいえる。


なぜなら、誰もが自分の人生の主役であるからだ。そして、誰もが自分の生まれた時代でしか生きられない。島田一郎と千田文治郎の二人の生き様、あるいは他の登場人物の人生から感じることはあまりにも多い。


混沌とした現代を生きる中、ぜひ、若い人に読んでもらいたい1冊である。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。