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「茶房一笑」のこと [金沢エレジーもしくはプレイバック]



金沢の東山に「茶房一笑」はあります。

加賀棒茶の老舗「丸八製茶」さんが、古い金沢の町家を改装して“茶房”に仕立て直したのはもう今から18年も前です。

わたしが金沢に行くのはごくたまにですが、その折にはなるべく立ち寄らせていただいております。





東山というのは、昔の花街で、ここ数年観光地としてずいぶん整備されました。(上の写真は昨年11月の平日朝9時ごろですので、比較的落ち着いた様子です。)

もし、30年くらい前にタイムスリップできるなら、最近の東山しか知らない方は驚かれるくらい、当時の東山界隈は静かでした。

いわば、“大人の隠れ家的”観光地でした。今ではたいそう賑わっている洋食屋「自由軒」さんあたりも、昔は近所の常連さんばかりで、観光客の方はあまり立ち寄ってなかったように思います。





閑話休題、「茶房一笑」のこと。上の写真は「茶房一笑」の二階から東山の町並みをみたところです。


ここ20年くらいのことでしょうか、日本の古き良き町並みや家々を守る動きがようやく認められてきて、それまでは済し崩し的に破壊されてきた町並みや古い家屋が、保全・再生されるようになってきました。これはとても喜ばしいことだとわたしは思います。


ただし、そうした保全や再生は、現代の便利な生活に抗う形にどうしてもなってしまうため、所有者には経済的負担は言うに及ばず、利便性など様々な不便や我慢を強いることとなっています。

そのため、どうしてもある程度ボリューム感があって、観光資源となるようなところでないと残らないのも事実かと思います。

そうした中、「茶房一笑」は見事に現代に蘇えった好例だとわたしは思います。


先日、本棚を整理していると、先の丸八製茶さんが発行されている小冊子『動橋』(第五号・1994年秋号)をみつけました。偶然にもその号は「茶房一笑」特集でした。


その中の一文を引用させていただき本日は終わりにしたいと思います。たぶん書かれたのは建築家の松島健氏です。

「どんなに美しい街並も、そこに生き生きとした現代的な生活が営まれていなければ、それは書割にすぎない。歴史と暮らす時の最大の課題がそのあたりにある。歴史のフラスコの中に沈殿した時間を撹拌する必要があるのだ。」
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