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加賀の地酒 [金沢エレジーもしくはプレイバック]





もう30余年前になる。わたしが金沢で生活しはじめて気づいたのが、三重県で慣れ親しんだブランドが金沢では目につかないということだった。

たとえば、新聞。中日新聞が少ないのは仕方にないとしても、三大紙といわれた「朝日」「読売」「毎日」をとっている家庭は少ないようだった。たしか、朝日などは夕刊がなくて、朝刊に夕刊のコラムなども掲載されていたような気がする。

かわって一般家庭でメジャーなのは「北國新聞」、次いで「北陸中日新聞」だった。正確なシェアは知らない。あくまでわたしの感覚である。


お酒もそうで、さすがにビールや洋酒はこちらと同じだが、日本酒は地元メーカーが圧倒的に強かった。松竹梅、月桂冠、大関、白鶴などはコマーシャルすら流れていなかったように思う。


当時、地元の三大メーカーといわれたのが、福正宗、萬歳楽、日栄だった。

これが1983年の話である。

その年だったか、翌年だったかに、ビッグコミックスピリッツで、『美味しんぼ』の連載が始まる。比較的初期の段階で、日本酒が取り上げられ、石川県の「菊姫」が紹介された。わたしたちはそんな銘酒が石川にあるのかと驚き、それ以後、「天狗舞」、「手取川」、「宗玄」、以上は石川県のお酒。富山県の「立山」、「銀盤」などの存在を知り、味もそれほどわからないのに純米酒を尊ぶようになった。


以下はわたしの全く勝手な感想なのですが、なまじ近代化していた「福正宗」(社名は、㈱福光屋)はそうした純米酒・大吟醸ブームにやや出遅れ感があったように見受けられた。


当社は創業1625年とむちゃくちゃ古い伝統の酒蔵である。味処加賀の地で脈々と酒造りを行ってきたのであるからその味は折り紙つきと考えてよかろう。その福正宗が古き佳き時代の酒造りを取り戻すにはやや大きくなりすぎていたのではないかと思った。


閑話休題、わたしは大学4年のとき、福光屋の社長様にヒアリングをしたことがある。もう内容は忘れてしまったが、わたしの態度は随分と生意気で失礼だったと思う。一つだけ覚えているのは、わたしが「甘エビを美味しいと思ったことはない」と言ったところ、気の毒そうな目でわたしを見て「君は可哀想な人だね」と言われたことだ。

わたしは金沢に4年住んだが、本物の甘エビを食べたことがなかったのである。今でいうところのB級グルメを愛し、ブルジョアが食べるような食材を、食べたこともないのに貶すようなところがあった。そんな狭い了見を福光屋の社長は一瞬で見抜き、「可哀想な人」と言ったのであろう、と思う。


先日、近所のスーパーで写真の品をみつけた。福光屋の純米大吟醸「加賀纏」。懐かしくて買ってみて飲んだ。


美味しかった。当社のHPをみると、いろんなユニークな取組みをされている。⇒http://www.fukumitsuya.co.jp/sake/


もし、機会あればこの30年間の当社の歩みを調べてみたい。
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