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『砂の器』 [キネマのブルース]

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前回と話は前後しますが、午前10時の映画祭で『砂の器』を観ました。


今回の午前10時のシリーズで楽しみにしていた1本です。


先日ご紹介した『ベニスに死す』がヨーロッパのことを知らないと本当に理解したことにならないのら、この『砂の器』は日本の古い慣習や戦後の混乱、そして貧困を知らないと本当に理解できないものと思います。


私のような昭和生まれがぎりぎりわかる世代なのではないでしょうか?


本作についてはいろいろ書きたいことがあるのですが、今回は2つに絞ります。


1つは夏の暑さの描き方です。


舞台となる昭和40年代はまだエアコンが行き届かず、夏の暑さを凌ぐ電化製品は扇風機が主流です。事件を捜査する刑事さんらはみんな暑そうで、扇子で仰いだりハンカチや時にはタオルで汗を拭っておられます。それらの仕種がいちいち仕事してる感が出ていて、文字通り汗を流し靴底を減らしての犯人捜しというのが実感されます。


それが観る者の心をつかみます。


これはこの時代の優れた映画に共通する演出だと書くとやや白けてしまうでしょうか?


黒澤明の『天国と地獄』でも夏の暑さが男の汗を使って表現されていました。


2つ目は、緒形拳さんのシーンで私が覚え違いをしていたことです。


緒形拳さん演じる巡査が自転車に乗って田んぼのあぜ道を手を振りながら一直線に走るところを正面から撮影したシーンがあったと記憶していました。畔道の両側に菜の花がいっぱい咲いている画でした。


なんの映画と間違えているのでしょう?


果たしてそんな場面はこの映画にはありませんでした。


そのシーンが最後に出てくるのを楽しみにしていたので少しガッカリしたのと、自分の記憶のいい加減さにあきれてしまいました。


それにしても『砂の器』は名作であって私はやっぱり泣いてしまいました。


嗚咽が館内のそこかしこで聞かれました。


この作品はリメイクされることもあるのですが、この映画バージョンを超えるものに出会ったことはありません。できれば本作のリメイクはやめてほしいものです。


『砂の器』は文字通り不朽不滅の名作です。タイトルと逆説的なのがまた深くていいですね。

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